秘密の地図を描こう

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 プラントに来たものの、自分はどうすればいいのかがわからない。
「まさか、オーブと連絡が取れなくなるなんて」
 思ってもいなかった。それがアスランの偽らざる本音だ。
「いったい、何が起きているんだ?」
 あの国で、と小さな声で呟く。
 ひょっとして、自分はカガリから離れてはいけなかったのだろうか。そんなことも考える。
 しかし、だ。
 自分の立場では拒むことも難しかった。
「カガリ……」
 何よりも、彼女が望んだのだ。キラを探してきてほしい、と。
 もっとも、と唇をかむ。それは自分を遠ざけるための口実だったのかもしれない。
「とりあえず、デュランダル議長にお会いしないと」
 話はそれからだ、と続ける。
「キラのことも聞けるかもしれないし」
 それだけでもかなえたい。そのくらいできなければ、自分がなんのためにここに来たのかがわからないだろう。そう呟いていた。

「ありがとうございます」
 そう言って、目の前の人物は微笑んで見せた。それは記憶の中にあるものよりも大人びている。しかし、間違いなく彼女本人だろう。
「ここに来られるのは大変ではありませんでした?」
 彼女はさらに言葉を重ねてくる。
「いえ。アスハ代表の許可がありましたので」
 そのおかげで、かなり楽だった……とレイは言う。
「それはよかったですわ」
 彼女はそう言って笑みを深める。しかし、どこかつかみ所がない。ひょっとしてキラが『彼女は怖いよ』と言っていたのは、こんなところなのだろうか。
「とりあえず、議長からです」
 自分以外の人間は目にしていないはずだ、と口にしながら、レイは二枚のデーターカードを差し出す。
「上の方にあるのは、キラさん特製の暗号ソフトです。それを使わないと中身が読めないはずです」
「キラがお作りになったものなら、そうでしょうね」
 レイのその言葉にラクスはうなずく。
「そういえば、キラはお元気ですか?」
 彼女はそのままこう問いかけてくる。
「これと一緒に届いた連絡では、元気だそうです」
 元気すぎて別の意味で問題だとか。ラウ達がキラのそばにいられなくなってきている以上、注意をできるものが誰もいない。それも心配だと思う。
「あらあら。キラらしいですわね」
 ならば、と彼女は続ける。
「わたくし達も動けるようにしておかなければいけませんわね」
 きっと、キラは動くだろう。だから、と彼女は言った。
「そう、ですね」
 できれば、そうなる前に何とかしたいのだが……と思う。
「キラには世界を変える力があります。本人が望む、望まないにかかわらず、です」
 そんな力がない方がキラのためにはよかったのだろうが、とラクスは初めて笑みを消した。
「それでも、わたくし達にはキラの力が必要なのです」
 どうすれば、彼の負担を減らせるのか。それを考えなければいけないだろう。
「わたくしも動きます。デュランダル議長にはそうお伝えくださいませ」
 ラクスは静かな声で告げる。
「承りました」
 レイはそう言ってうなずく。
「では、自分はこれで」
 そう長くここにとどまらない方がいいだろう。そう判断をしてこう告げる。
「お気をつけてお戻りください。それと……できればいつでも出航できるようにしておいていただいた方がいいかもしれません」
 オーブも一枚岩ではない。カガリの手を離れて暴走する者達もいる。彼女はそう言う。
「わかりました」
 自分達の知らない情報を彼女は持っているのだろう。だから、とうなずき返す。
「助言、ありがとうございます」
 こう言い返しながらも、やはり彼女は侮れない人物だ、とと言う認識を新たにした。

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最遊釈厄伝